自分で読んでみて大変面白かったライトノベル(ラノベ)を紹介します。
「大変面白かった」もののみです。
私は面白い本なり、ドラマなりは、飽きることなく何度も繰り返して読む・見る癖があるのですが、そういう類いのライトノベルをご紹介します。
1~2か月おきぐらいのペースで掲載します。
今回は「その1」
『宝くじで40億当たったんだけど異世界に移住する』
目次
タイトルの安直さに騙されてはいけない
『宝くじで40億当たったんだけど異世界に移住する』
最初見たときは「なんと安直なタイトルなんだろう」と思いましたが、ここ最近では私の中では大ヒットのラノベとなりました。
タイトル見て読むの止めた人も多いと思います。
とても惜しいなと思います。
現在、15巻まで刊行されており、多くの読者に支持されてるのが分かります。
あらすじ
以下、出版社による1巻のあらすじ。
ある日試しに買ってみた宝くじで、40億円もの大金を手にした志野一良。
金に群がるハイエナ共から逃げるため、先祖代々伝わる屋敷に避難した一良だったが、扉の先に突然異世界が現れて……!?
現世と異世界を往来しながら、一良は時に物資を、時に技術を持ち込み、新たな世界で人々を救い出す――
「小説家になろう」で大人気、異世界救世ファンタジー!
平凡系主人公の異世界物語
他の異世界系ラノベと違って、主人公には何の特殊能力もありません。
ごく平凡な、手先が器用かつ雑ネタ的知識が豊富な、人の良い日本人青年に過ぎません。
舞台となる異世界は、文明レベルが定番の「古代・中世なみ」で、現代日本とは格差があります。
ただ、魔法が登場するわけでもなく、奇怪な怪物が出てくるわけでもありません。
ドラゴンなどいませんし、ゴブリンやオークも登場しません。
生態系はほぼ地球と一緒で、これでどうやって面白い物語が書けるんだという感じです。
異世界との行き来は簡単
この物語での異世界と現実世界の行き来は簡単で、特定の通路を通るだけです。
通路一つを隔てるだけで、異世界の「グリセア村」と、現実世界の謎の屋敷を往復できます。
主人公は朝に現実世界で買い物して、夕飯は異世界で食べるなんて当たり前にやっています。
出版社のあらすじに有るように「物資」の持ち込み自由なところが、この物語の面白いとこであると同時に、これが決して単調な作品にならないところは作者の力量だと思います。
8巻からストーリーが一転
小説は現在、15巻まで出ています。
1~7巻までは、主人公が登場した地域の「ほのぼの内政充実物語」みたいな感じです。
かつてない大飢饉に襲われた某地の領主に信用された主人公は、現代農政知識を元種に水車・肥料などを用いて問題の解決に奔走します。
しかし、8巻になるとストーリーは一転し、隣国バルベールとの戦争がメインとなります。
その戦争も「戦国自衛隊」みたいな現代武器を用いた一方的な戦いにはなりません。
主人公が手持ちの金で買いあさった市販の物品のみを異世界に持ち込みます。
また「現代の技術体系をもたらすことによる異世界文明への負の影響」
この主人公の懸念もあり、抑制された技術の導入にとどまっています。
歴史ファンもニヤリの描写
読んでると、描写が現実世界の史実にかなり影響されてるのが分かります。
例えば、主人公が敵対するバルベール共和国は、おそらく古代ローマがモデルでしょう。
それも年代的には、共和制末期から帝政に至るあたり。
マリウスからカエサルあたりが活躍した時期で、軍制が市民制から志願制へと移行する頃です。
一方、主人公が属するアルカディア王国は、名前の響きから分かるように古代ギリシャがモデルになっているようです。
アルカディアは市民皆兵で、主人公が登場するまでは、兵種は重装歩兵中心のファランクス(長槍密集陣)での布陣を基本としています。
また、小説に登場する騎兵には馬具の「あぶみ(鐙)」が存在せず、幼少期から騎乗訓練を受けている貴族や有産階級の子弟が主だった、などの描写は史実そのものです。
こういう歴史ネタを作中にちょいちょい挟んでくるので、歴史ファンとしてはニヤリとさせられるところです(-_☆)
ストーリーには伏線貼りまくり
ストーリーは最初の方から随所に伏線が貼られており、わりと周到に作者氏は構想を練っていたようです。
例えば、
- 先祖代々伝わる謎屋敷
- 屋敷の秘密を教えてくれない父親
- 謎屋敷にある鉄貼りの床
- 謎屋敷の通路にある白骨死体
- グリセア村に伝わる「グレシオール神話」
- 巨大化する植物・超人化する住民
- 異世界の食物は主人公には栄養をもたらさない
謎の答えの半分ぐらいは、15巻刊行時点でも明かされず、いまだに引っ張っています。
アニメ化はあるのか?
昨今、アニメ業界もネタ不足のようで、主だったラノベが次々にアニメ化されてますが、本作はどうなるのか?
まあ、アニメ化には難しい作品だと思いますね。。
- 主人公が平凡人(そこが魅力ではあるが・・)
- 個人的な戦闘バトルが無い
- 1~7巻までが平和すぎる
- かといって、政戦略の描写が深い作品なので、そこをどう表現するのか?
変にしょうもないアニメにするぐらいなら、アニメ化してほしくないような気もします。
総評
この小説は何回も繰り返して読みました。
全体的に明るく、クセの無い主人公で読みやすいってのもあるかもしれません。
物語前半のほのぼの内政ストーリーに飽きが来た辺りに、一転して、いかにも戦史オタクが書いたような戦術描写有りの軍事物語に変わっていくのも面白いです。
物語の転換は、人によって賛否両論あると思います。
が、私には大変楽しめました。
また、軍事と並行して、物語の後半からは「他の神々(精霊?)」などの要素が入ってきます。
ここらへん、作者はどうやって結末付けるつもりなのか?
伏線貼りすぎなんじゃないかと、他人事ながら心配になってきます(^_^;)
現在、15巻まで刊行中
物語は現在(2022/10/15)15巻まで刊行されています。また、近日中に16巻の刊行が予定されています。
このうち1~15巻まではKindle Unlimitedに加入してると無料で読めます。
下手にゴブリンやオークなんか出さずに、現代地球と生態系を同じにしたあたりは、作品が散漫にならずにすんでると思う。ラノベ特有の定番要素もいらないと見るや極力省いている。これも作者氏の狙いなんだろうな。
そ、そうですね。
内政・軍事以外には、お決まりの恋愛ネタや復讐譚は散りばめられてます。とても楽しめました。
クセがなく軽妙に読めるわりには、深いところは深い作品です。