自分が読んでみて大変面白かったライトノベル(ラノベ)をご紹介。
今回は「その2」。
『災悪のアヴァロン』です。
目次
禍々しいタイトル
『災悪のアヴァロン』
この禍々しいタイトルから、何やら不吉な凶的な内容を連想しますが、作風は明るくコミカルでサクサク読めます。
タイトル中の「災悪」の意味は2巻で明らかとなります。
では、同じく「アヴァロン」とは何か?
伝説の楽園のことを指しているのか、あるいは某映画の仮想世界のことを指しているのか?
2巻まではまったく触れられてませんが、なんとなく後者っぽいですね。
あらすじ
以下、出版社による1巻のあらすじ。
重度の廃人ゲーマーだった会社員の“俺”は、ガッツリやりこんだVRMMO「ダンエク」世界に転移した――と思ったら、なんと探索者学校の嫌われ悪役デブになっていた!?
身体能力最低、ダンジョンのスライムにも負ける最下位スタートってマジかよ! しかもシナリオ通りの未来じゃ、美人の幼なじみとは結ばれず退学一直線の破滅エンド!?
最悪の結末を回避するため、目指すはダイエット&最速レベルアップ! ゲームの裏知識も駆使し、ハーレム展開と影の英雄の座も手に入れる!
冷徹な野心の下で最速最適解を求め、この“クソゲーめいたヤバすぎる世界”の攻略を始めた俺だったが……!?
ゲーム世界への転移
この小説はよくある「異世界転移」ではなく、「ゲーム世界内転移」です。
その意味では、あの「SAO(ソードアート・オンライン)」にも似ています。
会社員である主人公氏は、ハマったゲーム「ダンエク(ダンジョンエクスプローラークロニクル)」内に転移します。
もともとこのゲームのプレー方法が、VR用ヘッドマウントディスプレイを使った仮想世界への没入型なので、転移後の違和感がほとんどありません。
ただ、現実としか思えない超リアルな美麗グラフィックで、ログアウトが出来ないことから、主人公氏はゲーム内に転移した事実に気づきます。
ダンエクの世界観
ダンエクというゲームの世界観は、ラノベお決まりの中世ファンタジーの世界ではなく、「現代社会にダンジョンが出現した!」という内容になっています。
大正時代に世界各地にダンジョンが出現。
各国は積極的に制覇・開発を推し進め、ダンジョン内生物(魔物)から得られる魔石や資源を用いたエネルギー・素材等の産業が花開いています。
その影響で日本の運命も変わり、戦前からの政治・社会構造を残す「異なる日本」となっています。
前大戦での敗戦は軽度に抑えられ、社会には華族制が残っており、彼らは一定の政治的地位を持ってます。
日本には1つのダンジョンが有り、当初は軍主導で火器による制圧・開発が行われましたが、ダンジョン内では下層階に行くほどに魔物に銃は通用しなくなり、剣・魔法・スキルを用いた「冒険者」主体の開発に切り替わっています。
国は冒険者の育成を積極的に後押して「国立冒険者高校」を設立、そこがダンエクの舞台となっています。
主人公氏は、この冒険者学校の一人の生徒に転移します。
転移先は「ブタオ」
転移直後、主人公氏は最初は自分が誰だか分からなかったのですが、鏡を見てビックリ。
ゲーム内では通称「ブタオ」と呼ばれている悪役モブキャラに転移してました。
このキャラ、ヒロインの幼なじみで超肥満体。
最下位の実力で入学を果たした劣等生でした。
ゲームのストーリーでは、ヒロインに恋してセクハラを繰り返し、ライバルには嫌がらせを重ねて、やがて成敗されて退学させられる運命にあります。
典型的な悪役キャラですな。。。
しかし、最近のラノベに多い「悪役令嬢」系の作品と違って、主人公氏には運命を逆転させようなどとの必死感はありません。
主人公氏はゲームに関する知識があるので、それを活かせばたやすく退学に至るストーリーから逃れられると信じています。
冒険者高校
ゲーム内の冒険者高校は、中等部からの内部進学者によるA~Dクラスと、受験による外部入学者のEクラスで構成されています。
実力はAクラスが最強で、まだダンジョン経験の無いEクラスが最弱。
国全体の気風が、現代日本と違って「尚武」に偏っていることもあり、この冒険者学校内では「強い者こそ正義」の価値観がまかり通っています。
主人公氏はEクラスに所属。
他クラスから白い目で見られつつも、それを跳ね返そうとEクラスの学生は奮闘します。
「最弱」男の成り上がりストーリー
本作の面白みは、周囲から愚鈍な「冒険者学校史上最弱」と思われていた男が、ゲーム内の知識を活かして着実にレベルアップを進めていく点にあります。
その過程で幾多のゲーム内イベントが起きますが、主人公氏はそれを横目で見つつ&解説しながら、まずは自分の実力を蓄えるのに専念します。
また、現実世界では家族に恵まれなかった主人公氏は、ゲーム内では温かい家庭があります。父・母・妹。
この家族との交流も、この作品の魅力の一つです。
多くの謎を抱えつつ・・
現在、2巻まで出版されている本作には多くの謎・伏線が張り巡らされています。
・・・等々等。
これらの謎・伏線を見てると、作者はそうとうの長編前提でストーリーを考えてるのだなと思います。
アニメ化はあるのか?
これ、けっこう期待してるのですが、アニメ化にはうってつけの作品だと思います。
魅力的なキャラは多いし、見せ場もダンジョン内での魔物との戦闘だけではなく、学校内部での他クラスとの争いなど盛りだくさん。
3巻以降は、様々なイベントや生徒会・各派閥との軋轢が予想されます。
もう少し巻数が増えた時点で、ぜひともアニメ化してほしいものです。
総評
よくあるタイプの異世界系ラノベではなく、ゲーム内転移、しかもダンジョンが出現した異なる日本が舞台のゲーム世界に転移したという、このややこしい構造が面白いです。
主人公氏はわりと客観的・冷静に自分がゲーム内に転移した事実を捉えており、そういう状況を楽しみつつ、ゲーマーとしての知識を活かしながら、ゲーム内レベルを上げていきます。
文体は明るくユーモラスで、私は複数回読んでますが飽きが来ません。
今後のゲーム内イベントの展開や、謎・伏線をどうやって回収するのか?それが楽しみです。
現在、2巻まで刊行中
物語は現在(2023/2/20)2巻まで刊行されています。また、今年夏に3巻の刊行が予定されています。
このうち1巻はKindle Unlimitedに加入してると無料で読めます。

よくある異世界ラノベとは全く違って、読んでて面白かったです。

ラノベ界は、悪く言えば「大量生産・粗製濫造」になりがち。その中でキラリと光る作品を見いだすのも通の楽しみだよな。

・・・なんか格好良いこと言ってますね(^_^;)
最近のラノベは「パーティー追放系」「悪役令嬢系」「内政やりこみ系」が多かったが、また新しいタイプの登場だな。