昨今はラノベやアニメでは異世界ものが大流行りで、もはやテンプレと化した感があります。
「目が覚めるとそこは異世界だった!」
こんなのばっかりで、ある意味、食傷気味のジャンルでもあります。
・・・が、その中で個人的に超絶ハマった3冊をご紹介します。
キラリと光る面白さで、年末年始の良きお供となるでしょう(^^)v
目次
① 本好きの下剋上
*本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~:第一部「兵士の娘I」
「本好きの下剋上」は、よくある異世界ものと違って「俺ツエー」の主人公はでてきません。
それどころか、女性主人公は転生時点では身体虚弱な娘に過ぎません。
また、異世界もののテンプレ的な存在であるエルフ・ドワーフ・ゴブリン・魔物などの、人類以外の知的生物も出てきません。
作品には一貫して陽気なムードが流れています。
とても楽しく読める小説です。
子供向けの「ジュニア版」も出版されていることからも分かると思います。
ストーリー
以下、公式サイトよりストーリー抜粋。
とある女子大生が転生したのは、識字率が低くて本が少ない世界の兵士の娘。いくら読みたくても周りに本なんてあるはずない。本がないならどうする?作ってしまえばいいじゃない!目指すは図書館司書!本に囲まれて生きるため、本を作るところから始めよう!
緻密な世界観と多くの魅力的なキャラクターで大人気を集める本作が待望の書籍化!本好きのための、本好きに捧ぐ、ビブリア・ファンタジー!
この作品は、本好きの女性が、転生先の異世界で本作りに奮闘するところから物語が始まります。
それはやがて異世界初の活版印刷の発明へと結実してきます。
身分の上昇
また、タイトルにあるように「下剋上」がストーリーの大きな流れです。
一般庶民の娘として転生した主人公が、知恵や技術を駆使することによって身分・地位が上昇していきます。
この「上昇」は決して本人が望んだものでは無く、他者の思惑や、社会的な必要からやむなく身分が変化していきます。
そして、それに伴う喜びも悲しみも主人公は味わうことになります。
作品に流れる2つのテーマ:前半
作品の底流には、ストーリーの前半と後半に分かれる形で、2つの歴史的なテーマが流れています。
前半は「一つの世界に新たな技術をもたらし、その影響が世界全体に広がっていく」
「本好き」とタイトルにあるように、本と活版印刷の技術を世界にもたらし、その影響が社会や歴史そのものの変革につながっていきます。
現実世界でのグーテンベルクの発明と影響度を考えると、うなずける部分は大きいのではないでしょうか?
作品に流れる2つのテーマ:後半
後半は、ズバリ「神々の復権」です。
この異世界には「魔力」というものが存在し、その魔力の背景には実は神々の存在があります。
それがこの世界の本来の成り立ちです。
ですが、長い歴史の中で人々は神々を忘れ、軽視し、魔力を即物的なパワーとしてのみ認識するようになっています。
そのような世界に転生した主人公。
主人公はこの「神々の復権」の流れの起爆剤となっていきます。
刊行情報
「本好きの下剋上」は現在、1~28巻までが発売されています。
(2021/12/27現在)
また、アニメ化されてすでに2期までが放送されています。
3期も春から放送予定です。
② 無職転生
*無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ (1):理不尽な孫の手 (著)
「無職転生」はアニメ化されて今期は大人気となりました。
ご紹介する3作品の中では一番知名度があるのでは?と思います。
笑えて、時に号泣する作品です。
ストーリー
以下、公式サイトよりストーリー抜粋。
34歳無職童貞のニートは無一文で家を追い出され、自分の人生が完全に詰んでいたと気付く。己を後悔していた矢先、彼はトラックに轢かれ呆気なく死んでしまう。ついで目を覚ました場所は――なんと剣と魔法の異世界だった!!
憧れの人生やり直し型転生ファンタジー、ここに始動!
異世界ものの元祖的な存在
この作品、実は異世界系ラノベの元祖的な存在で、
◇転生した異世界は中世ヨーロッパ風の社会
◇人類以外の知的生物:エルフ・ドワーフ・ゴブリン・魔物・竜、などの存在
◇冒険者という職業と冒険者ギルド
◇魔法と魔術師
◇魔法の詠唱
こういうテンプレ的な要素が登場します。
剣と魔法を使った個人バトル
この作品と他の2作品との大きな違いは、剣と魔法を使った個人バトルが大きな割合を占めることです。
主人公は異世界に幼児として生まれた段階から、前世の記憶と知識があります。
また、幼少の頃から興味本位に魔術の練習をした関係で、他の魔術師には無い「無詠唱での魔術発動」この技能を有しています。
これらが戦闘における主人公の大きなアドバンテージとなっています。
しかし、強さの序列的に言えば、主人公以外に強者は幾人もいて、ストーリーの中で何回もボロボロに負かされてしまいます。
人生のやり直しと贖罪
ストーリー抜粋の中にもあったように、この作品の底流に流れているのは
「人生のやり直し」
「贖罪」
この2つです。
前世の不甲斐ない人生を後悔し、反省し、もう一度人生をやり直す。
そして、過去に迷惑をかけた人達、差し伸べられた手を振り払ってきた自分、その贖罪。
これらが作品の根底にあります。
刊行情報
「無職転生」は現在、1~25巻までが発売されています。
(2021/12/27現在)
*無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ (1):理不尽な孫の手 (著)
アニメ化もされて1期が放送されました。
③ 理想のヒモ生活
「本好き」「無職」に比べて、この作品は一定の人気があるにもかかわらず、アニメ化されてません。
あれほどネタ不足に陥ってるアニメ業界が、この作品に手をつけないのは何故か?
どう考えてもこの書名が影響しています。
「ヒモ」って、このタイトルはどうにかならなかったのかと(^_^;)?
誤解されやすいタイトルだと思います。
タイトルで損しています。
そこだけ見ると、いかにも軽薄 and ダラしない主人公を連想してしまいますが、実際は
「生真面目な主人公による」
「異なる価値体系の世界の」
「政治・軍事・文明俯瞰物語」
です。
ストーリー
以下、公式サイトからストーリー抜粋。
現代日本を生きる若手サラリーマンの山井善治郎は突然、恐竜が闊歩する亜熱帯の異世界―カープァ王国に召喚されてしまう。彼を召還した女王アウラは、「自分と結婚して、こちらの世界で暮らして欲しい」と申し出る。理想中の理想の美女との異世界での暮らしを選んだ善次郎に求められることは「できるだけ、何もやらないこと」・・・・・・!?
巻き込まれ系主人公
何故、主人公氏が召喚され、結婚を望まれたのか?
それは彼の血筋に原因があります。
この「血筋」の謎は徐々に明らかにされていって、世界情勢に波紋を広げることとなります。
また、当初は「できるだけ、何もやらないこと」が結婚条件だったにもかかわらず、様々な理由からそれは反故にされ、生真面目な日本人リーマンの典型である主人公氏は、やむなく政治・軍事に係わっていくようになります。
この状況に巻き込まれていく姿は、一昔前のラノベの鉄板だった「巻き込まれ系主人公」そのものです。
「異世界系巻き込まれ主人公」です。
惚れた伴侶の女王に尽くして健気に頑張る主人公氏の奮闘は、涙ぐましいものがあります。
転生では無くて「転移」
他の2作品が主人公の「転生」であったに比べ、この作品は主人公の「転移」です。
すでに20代に達していた日本のサラリーマン男性が、召喚により異世界に転移するストーリーです。
肉体的にも元の日本人のままです。
世界描写の緻密さ
この作品の面白さは世界描写の緻密さにあります。
異世界独特の価値観・政治体制などを細かく描写しています。
この作品世界では魔力というものが存在しつつも、それは一部の人間(特に王族)のみの特殊能力にすぎません。
よって、多くのラノベに見られるような「戦う魔術師」のような存在は出てきません。
また、世界は南北の大陸に分かれており、南が魔力優位の社会であり、北は技術優位の社会となってます。
よくあるラノベの原則、
「魔力に頼る社会は、代わりに技術の進歩が遅れる」
これは南側にあてはまります。
主人公の属する「カープァ王国」は南大陸にあります。
刊行情報
「理想のヒモ生活」は現在、1~14巻までが刊行されています。
(2021/12/25)
刊行ペースは、半年に1冊ぐらいのスピードです。