自分が読んでみて大変面白かったライトノベル(ラノベ)をご紹介。
今回は「その6」。
正式名は、
『転生大魔女の異世界暮らし~古代ローマ風国家で始める魔法研究』
です。
「歴史好き&異世界好き」な人には楽しめる作品だと思います。
目次
この本もタイトルで損してる??
毎度毎度思うんですが・・・この本もタイトルで損してます(^_^;)
書名が「転生大魔女の~」となってますが、平凡な現代日本のOL女性がローマ風国家に転生する物語です。
タイトルだけ見ると、どこぞの大魔女が別世界に転生して無双する大活躍劇ストーリーと誤解しそうになります。
そうではないのです!
ある意味、「本好きの下刻上」に似た雰囲気。
無双的展開ではなく、発明と着想により少しづつ社会を前進させていくような明るい物語です。
あらすじ
以下、出版社による1巻のあらすじ。
「憧れの魔法使いになりたい!」
古代ローマ風の国【ユピテル】に転生した少女ゼニスは、勢いだけで首都へと留学する。
水魔法を撒き散らして、教室を水浸しに。自分を実験体にしたあげくに昏倒、実験でお尻から熱風をぶっ放す、とその規格外な行動は止まらない。
白い目を向ける周囲をよそに、研究資金稼ぎに氷魔法で「かき氷」を売り出したら、うっかり大ヒットしてしまい……!?
研究ラブな少女が魔法革命を巻き起こす、ローマン・コミカルファンタジー開幕!
転生少女が首都に留学
主人公の「ゼニス」さんは、異世界の農村地帯に住む少女です。
幼い頃から奇行が多く、周囲を悩ましていました。
本人曰く「イカレ幼女だった」。
そして7歳の頃、ゼニスさんは前世の記憶に目覚めます。
日本の30代OLだった頃の記憶。
やがて彼女に魔法の素質があると分かり、首都の魔法学院へと留学することになります。
舞台は紀元前1世紀頃のローマ風国家
物語の舞台となるのは古代国家「ユピテル共和国」。
歴史上の古代ローマにそっくりな国です。
作者氏によると、モデルとなったのはローマ史の紀元前1世紀あたり、とのこと。
ちょうどローマが共和制から帝政に変わった頃。
有名なカエサルや初代皇帝「アウグスティス」のあたりでしょうか?
作中のユピテル共和国は広大な版図を誇り、幾多の民族を抱える多民族国家です。
社会には活気が溢れ、人々は進取の精神に富み、国全体が興隆の途上にあります。
パトロヌスとクリエンテス
ゼニスさんはユピテルの下級貴族の長女。
彼女の家は、上級貴族であるフェリクス家の「分家」にあたります。
本家は分家を保護し、分家は本家に対して報恩する義務を負います。
これがローマの有名な「パトロヌス(保護者)とクリエンテス(被保護者)」の関係。
ゼニスさんの魔法の師匠は、本家のお嬢様です。
他の異世界ラノベと違って・・
本書には他の異世界&魔法ラノベと違って、お約束の「ゴブリン」「オーク」「ドラゴン」などの魔獣は存在しません。
「エルフ」もいません。
ダンジョンもありません。
冒険者もいません。
当然、冒険者ギルドも無いです。
ラノベによくある魔石も存在しません。
魔道具や魔剣も無いです。
ユピテルにおける魔法や魔術師の位置づけは単なる「技能・技能職」。
これを習得したところで軍人になる以外に活用の道もありません。
社会的な地位は低いです。
なんか、ここらへの描写はすごく世知辛いというか、シビアというか。。
他の異世界系ラノベとの違いが際立っています。
魔法への探究心
ゼニスさんは、師匠のオクタヴィーや他の魔術師と違って、魔法というのものを根本から解明しようとします。
これは彼女の性格なのでしょう。
魔法とはそもそも何なのか?
魔法の根源である「魔力」とは何なのか?
魔術師はなぜ魔力を持つのか?
魔法はいかなる原理で作用するのか?
何故、呪文を唱えると魔法が発動するのか?
等々等。
また、彼女は魔法を応用した技術革新・発明にも夢中になります。
魔法を使った技術革新
同じ異世界系ラノベの「本好きの下剋上」での描写が、活版印刷などの物理的な技術革新に対して、本作品では魔法を使った技術革新がテーマとなっています。
主人公がふとしたキッカケで始めたのは、魔法で作った「氷」を使う商売。
これが契機となり、魔法による商品の保温・冷蔵方法を考え出し、遠隔地に生鮮品を冷蔵状態で運ぶことを考えるようになります。
やがてこれが本家を巻き込み魔法版の「輸送革命」「冷蔵革命」へと進んでいきます。
ローマ風の社会や世相描写
本書には随所にローマ風の社会や世相描写が書かれています。
お風呂や入浴が好きな国民性。
領土内に張り巡らされた道路網。
太陽暦を採用していること。
資産家を「騎士階級」と呼ぶこと。
ローマ史が好きな人ならニヤリとするかも。
また、本書では史実の国名や地名は以下のように変換されています。
- ローマ ⇒ ユピテル
- ギリシャ ⇒ グリア
- ガリアやゲルマン ⇒ ノルド
- ユダヤ ⇒ エルシャダイ
- ペルシア帝国 ⇒ アルシャク
- カルタゴ ⇒ ソルティア
- エジプト ⇒ 太陽の国
伏線とタイトル
冒頭に「タイトルで損してる?」と書きましたが、3巻以降でタイトルの「大魔女」というキーワードが意味を持つ予定なのかもしれません。
これが実は伏線なのかもしれません。
あと、1巻のテルマエ(公衆浴場)に出てきた銀髪の少女。
去り際の意味深な一言にも伏線の匂いを感じました。
続刊が出て、これらの伏線が回収されることに期待しましょう(>_<)
総評
個人的に、久々にラノベで面白いと感じた作品でした。
バッタバッタと切りまくる剣劇もなく、魔法によるバトルもなく、主人公が知恵と好奇心で社会に良い影響を与え、周囲の人に認められていきます。
終始、明るい雰囲気の物語で、なんとなく「本好きの下剋上」とも似ています。
また、ユピテルのモデルである古代ローマの社会構造や世相も描写され、歴史書を読むような面白さもあります。
現在、2巻まで刊行中
物語は現在(2024/10/7)2巻まで刊行されています。
1巻はKindle Unlimitedに加入してると無料で読めます。
*転生大魔女の異世界暮らし~古代ローマ風国家で始める魔法研究
*転生大魔女の異世界暮らし2~古代ローマ風国家で始める魔法研究
ローマと言っても、英雄・政治家などはでてきません。
好奇心旺盛な一人の少女視点で物語は進行します。
君なんかはローマ史好きだから、こういうストーリーは大好物だろう?
作者氏は2巻あとがきで参考書籍を掲載しています。
私の好きな塩野七生さんの「ローマ人の物語」も載ってました(^^)v
「古代ローマ+魔法」な物語というわけか?